【サルでもわかる】学問紹介シリーズ

【サルでもわかる】構造力学入門!超高層ビルから橋まで、私たちの暮らしを支える力の科学!

2024年12月9日

この記事では、工学部で構造力学を学ぼうとされている方など初学者の方が向けに、構造力学を学ぶうえで押さえておきたいポイントを、なるべくわかりやすく解説していきます!

そもそも構造力学って何?!

まず最初に、構造力学(こうぞうりきがく)とは何をする学問なのかからスタートしましょう!

構造力学というのは、建築物や橋、機械のフレームなど、さまざまな「構造」を安全かつ合理的に設計するために、「力の働き」を数値で把握するための学問です。

例えば建物が地震の揺れに耐えられるかどうか、橋が車の重量を十分支えられるかどうかを判断するためには、力の分布や部材にかかる応力を正確に知っておく必要がありますよね。

そこで活躍するのが構造力学なのです!

構造力学を使うと、建物や橋にかかる荷重(重さや力)をモデル化し、どの部材にどのくらいの応力(ストレス)が発生しているかを計算できます。

さらに、その応力が材料の許容できる範囲内かどうかを評価し、安全かどうかを判断するわけです。

これを正しく行わないと、建物が傾いたり、橋が壊れてしまったりと大変な事故につながる恐れがあります。

そのため、構造力学は土木や建築、機械など幅広い分野で非常に重要な役割を果たしています。

応力とひずみをイメージしよう!

構造力学で頻繁に使われるのが「応力(ストレス)」と「ひずみ(ストレイン)」という概念です。

材料の内部には、外部から力が加わると見えない力の流れが生じます。

それを数値化したものが応力であり、変形を数値化したものがひずみです。

応力とは何か

材料に力がかかると、その材料内部には抵抗しようとする力が働きます。

その抵抗力を断面積で割った値が「応力」です。

応力の種類には引張応力圧縮応力せん断応力などがあり、構造物が受ける力の方向やモード(引っ張り・押し込み・切り取りなど)に応じて様々な応力が発生します。

ひずみとは何か

ひずみ(ストレイン)は、材料が変形した度合いを表す指標です。

元々の長さに対してどれだけ伸びたか、あるいは縮んだかを比率で示します

非ですから、単位はありません。

材料の変形を評価する大事な概念なので、ぜひ覚えておきましょう!

弾性と塑性:材料の性質を知る!

力を加えたとき、材料がどのように変形するかは、その材料の性質によって決まります。

構造力学では特に「弾性」と「塑性(そせい)」が重要です!

弾性変形とは

弾性変形とは、力を取り除いたときに元の形状へ戻る変形のことです。

ゴムをイメージするとわかりやすいですね。ゴムを引っ張っても、力を緩めれば元通りになります。

金属材料の多くも、小さい力の範囲であれば弾性変形します。

塑性変形とは

塑性変形は、一度変形すると元の形に戻らない変形を指します。

金属が大きく曲げられて元に戻らなくなる状態をイメージすると、塑性変形のイメージがつかみやすいでしょう。

構造物に大きな衝撃が加わると、一時的に塑性変形を起こしてエネルギーを吸収する場合もありますが、安易に塑性域に達すると破断に近づく恐れがあります。

安全率を見込んで、弾性領域の範囲内で設計することが基本です!

トラス構造ってどんなもの?

構造力学でよく登場する例として「トラス構造」があります。

三角形を組み合わせた形状をイメージしてみてください。

例えば、橋や鉄塔などには三角形をたくさん組み合わせた形が見られますよね。

これがトラス構造です。

トラス構造の利点は、部材にかかる力が主に「軸方向(引張または圧縮)」だけになるように設計されている点です。

なぜ三角形なの?

四角形を想像してみるとわかりやすいのですが、四角形は力が加わるとひし形に変形しやすいです。

一方、三角形は三辺が固定されると変形しにくい剛な形として知られています

そのため、三角形を基本単位として組み立てるトラス構造は、軽量かつ高い剛性が得られるのです!

トラス構造の応力計算

トラス構造において、各部材には引張応力または圧縮応力が軸方向に作用します。

部材同士はピン接合とみなされることが多く、モーメントを伝達しない(曲げを受けない)ため、

のも特徴です。構造力学を学ぶときは、トラスの節点ごとに釣り合い式を立てて各部材の軸力を求める手法をまず学ぶことが多いでしょう!

はり(梁)の曲げモーメントとせん断力

建物や橋でよく使われる「はり(梁)」も、構造力学での重要な研究対象です!

はりには垂直方向(重力方向)の荷重がかかり、これを支えるときに「曲げモーメント」や「せん断力」が発生します。

曲げモーメントとは

はりの任意の断面を考えたとき、その断面を回転させようとする力のことを「曲げモーメント」と呼びます。

単位はN・mやkN・mです。

はりに人や荷物の重さがかかった場合、はりはたわもうとするので、このとき内部には「曲げモーメント」が発生していると考えます。

せん断力とは

また、断面をずらそうとする力を「せん断力(シアフォース)」といいます。

はりに荷重がかかっているとき、断面同士を滑らせようとする力が作用しているのです。

せん断力が大きい部分では、はりの腹部などにせん断破壊が起きやすくなるので、設計の際にはせん断補強などを考慮することが多いです。

SFD(Shear Force Diagram)とBMD(Bending Moment Diagram)

構造力学の授業などでは、はりに集中荷重や分布荷重を与えて、そのはりの各断面におけるせん断力図(SFD)曲げモーメント図(BMD)を描く問題が出てきます。

はりの「どの位置でせん断力や曲げモーメントが最大になるのか」をグラフで可視化するわけですね。

この図をもとに、どこにどれくらいの応力が発生するのか、どの断面が一番危険なのかを把握します。

静定構造と不静定構造

構造力学の学習が進むと、「静定構造」と「不静定構造」という分野を勉強することになります。

静定構造とは、力のつり合い条件(力とモーメントの釣り合い式)だけで部材力が求まる構造を指します。

一方、不静定構造とは、力のつり合いだけでは解が一意に決まらず、部材のたわみ量など変形条件を考慮しないと解けない構造を指します。

静定構造の例

シンプルに支点が2つだけのはりや、単純なトラス構造は静定構造の代表例です。

3つの静力学的つり合い式(ΣFx=0、ΣFy=0、ΣM=0)を使って、スッキリ応力を解けるのが特徴です。

不静定構造の例

支点が多かったり、固定端が組み合わさったりしているはり、また連続はり、ラーメン構造などは不静定構造に分類されます。

これらは「弾性変形の関係式」や「境界条件」を利用して連立方程式を立てて解く必要があるため、計算が複雑になります

ただ、現実の建築物や橋は不静定構造を採用することが多いんですよね。

そうすることで剛性や安定性が高まり、荷重が分散されやすくなるというメリットがあるのです!

代表的な解析方法

不静定構造の解析を行う際、代表的な手法としては「力法(定数法)」や「変位法(変形法)」などがあります。

最近ではコンピュータを使った有限要素法(FEM)も一般的ですが、まずは手計算でも分かりやすい基本的な手法を理解しておきましょう!

力法(定数法)

力法は、構造に余分な支持反力や内部反力を「未知の量」として設定し、それらが生じないように変形条件を立てる方法です。

やや抽象的ですが、一言でいうと「冗長な支点や結合を想定し、その反力がゼロになるように変位を考慮して式を立てる」やり方です。

静定構造に近い部分を基準にして計算を進めるので、基準構造と冗長反力を決められれば比較的スムーズに式を作りやすいのが特徴です。

変位法(変形法)

変位法は、逆に各節点や支点の変位(たわみ)を未知数として、部材の力学関係式から連立方程式を立てる方法です。

剛性マトリクス法とも呼ばれ、現代のコンピュータ解析では標準的な手法といえます。

各部材の剛性(たわみにくさ)を行列としてまとめ、節点変位を求め、それに基づいて部材力を算出します。

有限要素法(FEM)

さらに高度な解析が必要な場合、有限要素法(FEM)を用いることで、構造を多数の小さな要素(メッシュ)に分割し、それぞれの要素の変位や応力を計算していきます。

手計算では扱いきれない複雑な形状や応力分布にも対応できるので、実務や研究で幅広く使われています。

ただ、初心者の段階ではFEMの詳細に踏み込みすぎず、まずは静定構造の計算や基本的な不静定構造の手計算をしっかり理解すると良いでしょう!

安全率と許容応力設計

構造力学で計算された応力や変形は、理論上の数値です。

実際の設計では、この数値に対してどれだけ余裕を持たせるかを考えます。

それが「安全率」や「許容応力設計」という考え方です!

安全率

安全率(Safety Factor)とは、材料がギリギリ破壊しない応力に対して、何倍程度の余裕を見込むかを示す数値です。

例えば、材料の降伏応力が300MPaだとして、安全率を1.5に設定するなら、設計上の許容応力は200MPa程度とします。

こうすることで、実際の条件で多少の不確定要素があっても、構造が破壊に至りにくくなります。

許容応力設計

許容応力設計は、構造に生じる最大応力が“材料が許容できる応力以下になるように設計する方法です。

計算で得られた応力が、許容応力をオーバーしないかどうかをチェックします。

このとき、実験データや経験則から設定された材料強度の分散や施工誤差などを考慮して、安全率を掛け合わせている場合が多いです!

構造力学と実務のつながり

構造力学は理論的で数式ばかりのイメージがあるかもしれません。

しかし、実際の建築や土木、機械などの現場では、構造力学の考え方があらゆる場面で使われています!

たとえば新しいビルを建てるとき、設計図を作る前に構造の強度計算を行い、どの部材をどんな太さや形状にすればよいのかを決める必要があります。

さらに、建物に使う鋼材やコンクリートなどが、実際の使用環境でどれだけの荷重に耐えられるかを把握するために、構造実験やシミュレーションを行いますよね。

こうしたプロセスの基礎にあるのが構造力学です。

初心者がつまずきやすいポイント

構造力学を学ぶうえで、初心者がよくつまずくポイントをいくつか挙げてみましょう!

  1. 図の書き方や力の方向の読み間違い
    問題文を読んで正確に力の向きや支点の種類を図示しないと、後々の計算でミスが生じます。めんどうでも毎回しっかり図を描く習慣を身につけるのが大事です!
  2. ベクトルの分解・合成
    力の成分分解や合力の計算で計算ミスや符号ミスをしやすいのはあるあるです。慣れるしかないので、練習問題を繰り返し解いてみましょう。
  3. せん断力図や曲げモーメント図の描き間違い
    荷重の場所や支点の種類でグラフの形状が変わるため、最初は覚えるのが大変かもしれません。典型的なパターンをしっかり整理しておくとよいですね。
  4. 不静定構造の解き方の混乱
    力法や変位法など、複雑な数式展開に慣れるまで時間がかかるかも…ですが、基礎原理をきちんと理解すれば、パターン化して解きやすくなります。

まとめ

構造力学は、一見とっつきにくく感じるかもしれませんが、実は身の回りのあらゆる建物や構造物に直結している学問です。

力のつり合いを学ぶことで、橋やビルがなぜ壊れないのか、どこに大きな応力が集中するのかがイメージできるようになります!

これはすごくワクワクすることですよね。

  • 力の基礎(ベクトル計算、つり合い式)をしっかり押さえる
  • 応力・ひずみなど材料力学の要素とリンクさせる
  • 静定構造から不静定構造へステップアップ
  • トラスとはりの計算に慣れ、実際の構造物と結びつけて考える

こうしたポイントを意識しながら勉強を進めると、構造力学がグッと面白くなるはずです!

最終的には複雑な構造を解析できるようになり、実際の設計や安全評価にも大きく役立ちます。ぜひ楽しみながら学んでみてくださいね!

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