はじめに
私たちが日常的に使っている電力を生み出す方法には、さまざまな種類があります。
太陽光発電や風力発電、水力発電、化石燃料を使った火力発電など、たくさんの発電方式がある中で、「核分裂」と「核融合」を利用する核エネルギーも世界的に注目されています。
一方で、「核エネルギーって聞くと、ちょっと怖いイメージ…」「核融合と核分裂って結局なにがどう違うの?」という疑問もあるかもしれません。
確かに、核エネルギーは危険であったり放射線とセットのイメージが強いですし、ニュースなどでも「核融合研究で実験成功!」や「核分裂を使った原子力発電」の話題が飛び交っていて、用語が複雑に感じることも多いですよね。
そこで本記事では、核分裂と核融合の基本をしっかりと押さえながら、それぞれの仕組み・メリット・デメリット、そして両者の違いをやさしく丁寧に解説していきます!
専門的すぎる言葉はなるべく平易にして、読み進めやすいように工夫していますので、ぜひ最後までお付き合いください。
核分裂と核融合の違いはここがポイント!
いきなりですが、核分裂と核融合の違いをざっくりまとめて確認してみましょう!
それぞれの項目について、後ほど詳細にご説明いたします。
- 原子核の動き:割れる vs. くっつく
- 核分裂:大きな原子核が分裂して、小さな原子核に分かれる
- 核融合:小さな原子核が融合して、大きな原子核になる
- エネルギー源としての主流度
- 核分裂:既に原子力発電として世界各地で広く利用されている
- 核融合:まだ研究・開発段階で、商業用の実用化は未達
- 安全性や廃棄物の問題
- 核分裂:高レベル放射性廃棄物が生じ、安全対策やリスク管理が必須
- 核融合:放射性廃棄物は少なめとされるが、装置の放射化などの課題は残る
- 暴走リスク
- 核分裂:連鎖反応がコントロール不能になる可能性があり、重大事故へ発展するリスク
- 核融合:高温高圧が維持できなければ反応が止まるため、暴走は起こりにくい
- 燃料資源の入手性
- 核分裂:ウランやプルトニウムなど、限られた資源を採掘・濃縮
- 核融合:重水素は海水中に多く存在するが、三重水素をどう安定供給するかが課題
核分裂のメカニズムをやさしく解説!
まずは核分裂について見ていきましょう。
核分裂は、簡単にいうと重い原子核が分裂する現象です。
ウランやプルトニウムといった「質量数の大きい(重い)原子核」に中性子が衝突すると、その大きな原子核が「パカッ」と割れるんです!
ここで高校化学のおさらい!原子が物質の一番小さな単位だと思いがちだけど、原子は陽子・電子・中性子で構成されているんだ!
核分裂の仕組み
核分裂反応の代表例:ウラン235
ウランにはいくつか同位体(元素番号は同じだけど、中性子の数だけが異なる)がありますが、核分裂を起こしやすい「ウラン235」という原子核に中性子が当たると、原子核が分裂します。
分裂すると、エネルギーがドーンと放出されて、さらに2~3個の中性子が飛び出すんですね。
この際、エネルギーだけでなく、生物に多大な悪影響を与える放射線が一緒に放出されることもポイントです。
連鎖反応
飛び出した中性子が、また別のウラン235の原子核にぶつかると、その原子核も分裂を起こす。
そうするとさらに中性子が…というふうに、どんどん続いていくわけです。
この続いていく反応が「連鎖反応」と呼ばれています。
核分裂によるエネルギー放出は非常に大きく、これを利用して発電したり、場合によっては兵器(原子爆弾)に応用されたりしてきた歴史があります。
現在、多くの国で稼働している原子力発電所は、この核分裂の連鎖反応を制御しながら、お湯を沸かしてタービンを回す方式を採用しています。
核分裂のメリット・デメリット
次は、核分裂のメリット・デメリットをまとめましょう。
核分裂の特徴を知る上で、長所・短所をセットで把握するのはとても大切です!
核分裂のメリット
大きなエネルギーが得られる
核分裂で放出されるエネルギーは、化石燃料の燃焼と比べても桁違いに大きいです。
ウランを少量使うだけで莫大な電力を得られるので、エネルギー源として高い効率が期待できます。
安定した基幹電源として利用可能
原子力発電では、核分裂の連鎖反応を制御しながら一定の電力を生成できるため、天候や季節の変化などにあまり左右されません。
風力発電や太陽光発電と違い、安定的に電力を供給できるという点は、インフラとして非常に大きな利点です。
化石燃料の消費を抑えられる
原子力発電は、CO2の排出がきわめて低い発電方法として評価されることがあります。
二酸化炭素排出量を削減する観点では、火力発電の依存度を下げられるメリットがあります。
核分裂のデメリット
放射性廃棄物の問題
核分裂を利用した発電では、どうしても使用済み核燃料などの放射性廃棄物が出ます。
これを安全に保管したり処理したりするための長期的な管理が必要で、技術的にもコスト面でも大きな課題となっています。
重大事故のリスク
原子力発電所が事故を起こした場合、放射能漏れなどの深刻な被害をもたらす可能性があります。
制御不能な連鎖反応や冷却システムのトラブルが発生すると、地域社会や環境に大きな影響を及ぼすことになるため、非常にシビアな安全管理が欠かせません。
核兵器への転用リスク
核分裂による連鎖反応は、原子爆弾と原理的に同じ技術です。
原子力発電のために濃縮ウランやプルトニウムなどが取り扱われる以上、核兵器との境界問題が常につきまといます。
国際的な管理と監視が不可欠な理由はここにあります。
核融合のメカニズムをやさしく解説!
次に核融合について。
核融合は、核分裂と対照的に「軽い原子核が合体して、より重い原子核になる」現象です。
私たちの身近な例としては、なんといっても太陽が核融合でエネルギーを生み出している、ということ!
核融合の仕組み
軽い原子核同士が合体
代表的なのは、水素の同位体(重水素と三重水素)が融合してヘリウムになる反応です。
太陽の中心部では高温高圧の環境下で水素原子核が衝突・融合して莫大なエネルギーを放出し、私たちが目にする光や熱を生み出しているんですね。
高温高圧が必要
プラス同士の電気をもつ原子核は、本来お互いに強く反発し合います。
その反発を乗り越えて核融合を起こすためには、1億度を超えるような超高温・超高圧の環境が必要です。
地球上でこの環境を人工的につくるのはとても難しく、現在も世界各国の研究機関が実験装置を使って研究を続けています。
地球で核融合反応を実用化できれば、太陽と同じ原理で莫大なエネルギーを取り出せるということになります。
まさに夢のエネルギー源と言われるゆえんですね!
核融合のメリット・デメリット
核融合は「何となく未来のクリーンエネルギー!」と語られがちですが、もちろん難しい点もあります。
ここでは、核融合のメリットとデメリットを整理しましょう。
核融合のメリット
莫大なエネルギーが期待できる
核融合反応によって放出されるエネルギーは、核分裂よりもさらに桁違いに大きいとされています。
成功すれば、世界が必要とする膨大な電力を安定的に供給できるかもしれない、という大きな可能性があります。
放射性廃棄物が少ない
核分裂と比べて、核融合による放射性物質の発生は大幅に少ないといわれています。
核融合炉では、水素の同位体(重水素・三重水素)を燃料として使い、主生成物はヘリウムです。
ヘリウムは無害な気体ですので、分裂のような高レベル放射性廃棄物の処理問題は相対的に小さいと考えられています。
核暴走のリスクが低い
核融合の場合、非常に高い温度・圧力で「やっと」融合反応が起こります。
もし何らかのトラブルで条件が崩れれば、たちまち融合反応は止まってしまうため、分裂の連鎖反応のように勝手に暴走して大事故につながる可能性はかなり低いと見られています。
核融合のデメリット
実用化が極めて困難
先ほど述べたように、核融合を起こすためには1億度以上の高温・高圧環境が必要です。
これほどの環境を維持しながら、安定して核融合反応を持続させる技術はまだ確立されていません。
巨大な研究施設や莫大な開発費用を投じて世界中で研究が進んでいますが、実用化にはまだ時間がかかると言われています。
核融合炉特有の放射化問題
核融合反応そのものから出る放射性廃棄物は少なくても、超高エネルギー粒子と反応器壁面の材料との相互作用で、装置の部材が放射化してしまう懸念があります。
核分裂ほどではありませんが、それなりに廃炉時の放射性廃棄物が生じる可能性は否定できません。
三重水素など燃料の確保課題
核融合炉では、重水素と三重水素を燃料とします。
重水素は海水中にも存在しているため比較的入手が容易と言われていますが、三重水素は人工的に生産する必要があり、まだ課題が多く残っています。
核エネルギーの今後
地球温暖化対策としても、世界は再生可能エネルギーやクリーンエネルギーを求めています。
その中で、核融合はほぼ無尽蔵ともいえる大きなエネルギー源になる可能性を秘めているため、世界各国で大規模な研究が進められています!
しかし、商業ベースでの核融合発電が実現するまでには、技術的にも経済的にもハードルが山積みです。
1億度以上を制御し続ける装置や材料開発、安全対策、コスト削減など、まだまだ研究段階を脱していないのが現状といえます。
一方、核分裂は既に実用化されており、安定したエネルギー供給源として多くの国で原子力発電所が稼働しています。
ただし、原子炉の老朽化や廃炉プロセス、使用済み核燃料の最終処分など、多くの課題を抱えていることも事実です。
また、ひとたび重大事故が発生すると、周辺住民や環境へ大きな被害をもたらし、社会的信用を失うリスクもあります。
各国がエネルギー政策を考える上では、核分裂の技術の安定性とリスク管理、そして核融合の将来的な可能性のバランスをどう図るかが重要なテーマになっています。
再生可能エネルギーを増やす方向性があっても、基幹電源としての安定性を補うために核分裂を継続的に利用しつつ、核融合の研究開発を進める――といった方策も検討されているわけですね。
まとめ
いつの日か核融合が実用化されれば、クリーンで安全なエネルギー大国への道が開けるかもしれません。
しかし、その日が来るまでは、既存の核分裂技術とどう向き合いながら再生可能エネルギーを拡充していくか――そこが私たちの大きな課題なのです。
本記事を通じて、核分裂と核融合の違いをおさえつつ、これからのエネルギーについて少しでも興味を持っていただけたなら幸いです!
私たちの未来を左右するテーマだからこそ、正確な知識と議論が求められています。