はじめに
「万物は争いから始まる!私たちが平和に暮らすためには○○が必要なんだ!」
こんな激アツな主張を展開したのが、イングランドの哲学者トマス・ホッブズ(Thomas Hobbes)という人物です。
彼は、「リヴァイアサン(Leviathan)」 という本を著し、絶対王政の正当化や社会契約説など、政治哲学の新たな地平を切り拓きました。
「なにやら難しそう...」「ホッブズって何した人だっけ...」そんなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか?
今日は「サルでもわかるホッブズ」と題して、哲学や政治思想に詳しくなくても理解できるように彼の思想や歴史的背景、そして現代に役立つヒントを柔らかい文体でガッツリ解説していきたいと思います!
最後には、著者の経験を踏まえた、人生・ビジネスへのヒントもお伝えします!
ぜひこの記事で、ホッブズが主張したかったことのキモをつかみ取ってみてくださいね。
この記事の概要・結論
ホッブズの主張とは?
「人間の自然状態は闘争だ!そこで平和をもたらすためにリヴァイアサン(国家権力)が必要なんだぜ!」
「だからこそ、みんなで話し合って社会契約を結び、強力な統治者に権力を集約しよう!」
ホッブズの思想から抽出できる現代を生きるヒント
社会の秩序を守るルールや仕組みの意義
自己防衛本能を前提にしたリスクマネジメントの重要性
協力するって実はみんなで生きるための戦略だよね!
ホッブズが生きていた時代とは?
ホッブズが生きた時代は、17世紀前半から17世紀後半のイングランド。
当時のイングランド(イギリス)は大混乱!
宗教改革後のカトリックとプロテスタントの対立、王権の正当性をめぐる王党派と議会派の対立など、国内外で政治的・宗教的対立が激しくなっていました。
特にイングランド内戦(清教徒革命)と呼ばれる大きな政変が起こったことで、「王様っていったい何者?」「庶民が政治に参加するってどういうこと?」など、社会秩序の在り方に対する疑問や動揺が広まっていたのです。
ホッブズは1588年に生まれました。
実はあのスペイン無敵艦隊(アルマダ)をイングランドが破った年でもあります。
「嵐がホッブズを産ませた」と揶揄されることもあるほど、幼少期から政治的にゴタゴタした環境下で成長したといえます。
彼はオックスフォード大学で学び、当時としてはかなり教養が豊かな人物でした。
そしてなにより政治の在り方に対する強い関心があった。
混乱だらけの母国イングランドを見つめながら、「人間は本来どういう性質を持っているのか?」「平和を保つにはどうしたらいいのか?」と考え続けたのです。
結果として彼が出した答えは、「みんな争いがちだから、強力な支配者を立てるしかない!」という、ある意味ちょっと過激にも思える説。
これが彼の名著『リヴァイアサン』にまとめられており、後々の政治思想や社会契約論に多大な影響を与えました。
ホッブズの主張
自然状態:人間は自己保存のために争う生き物!?
「自然状態(State of Nature)」という概念は、ホッブズを語るうえで絶対に外せないポイントです!
ホッブズはこう考えました。
もし政府や法律などの仕組みがなかったら、人間は自分の身を守るために闘争を始めるしかない!
なぜなら、人間は誰でも自己保存(自己防衛)という本能を持っているから。
つまり、自分が生き残るためなら何でもやっちゃう「オレオレ、私が一番大事!」的な性質があるのです。
もちろんこれは「みんな利己的だよね!それが人間だよね!」と断言しているわけではありません。
ただしホッブズが言いたいのは、「争いが起こる可能性」を常に頭に入れておかないと、社会はまとまらないよ、ということです。
この自然状態での人間同士の関係は、「万人の万人に対する戦い」(Bellum omnium contra omnes)と呼ばれます。
一見極端にも思えますが、背景には「当時のイングランドが実際にドンパチ状態だった」ことも影響しているのかもしれません。
有名な「万人の万人に対する戦い」は、自然状態にあるすべての人間が自分のために戦う、ということだったんだね!
リヴァイアサン(Leviathan)の誕生:みんなで話し合って、最強権力を立てようぜ!
ここで登場するのがホッブズの有名な著書、『リヴァイアサン』。
リヴァイアサンとは旧約聖書に登場する巨大な怪物で、ここでは「強大な力を持つ国家」を指すメタファーとして使われています。
自然状態のままでは争いが絶えないので、みんなで話し合って社会契約を結び、「最強の支配者(あるいは政府)」に権限を預けよう!というのがホッブズの提案。
「個々人が、互いに攻撃しあわないことを約束し合う」
「そのために、お互いが納得のいく“代表者”を決め、絶対的な権力を預ける」
つまり、一定の自由を譲る代わりに平和を手に入れるわけです。
ここだけ聞くと「民主主義的な社会契約じゃん?」と思う人もいるかもしれませんが、ホッブズ自身はわりと絶対王政寄り。
「王様や君主にしっかりと権力を渡してしまった方が、平和を保てる!」と強く主張しているのです。
なぜなら、みんながバラバラに強い主張をすると、また争いが起こってしまう可能性が高いから。尖った言い方をすると、
強い支配者がいれば、それに歯向かうのはめっちゃリスキーだから、争いが減るでしょ?
という理屈です。決してホッブズは「王様バンザイ!」「民衆なんて黙っとけ!」と言いたかったのではなく、どうにかして争いを減らす現実的な解を模索した結果、そう考えたのです。
ホッブズの思想から抽出できる、現代を生きるヒント
「ホッブズの社会契約は、絶対王政を擁護するためのものだから現代には合わないんじゃないの?」と考えがちですが、実はそうとも限りません。
ホッブズの本質的なメッセージは、「人間は争いを起こす可能性を内包しているけど、ちゃんと秩序を作れば平和に生きられる!」という点です。
これを現代の私たちの生活に当てはめてみましょう。
社会の秩序を守るルールや仕組みの意義
ホッブズは徹底的に「ルールがなければ、みんなケンカする可能性あるよ!」と言いました。
これをもう少し柔らかく捉えると、「ルールや法律があるからこそ、私たちは安心して生活できる」と言えます。
たとえば、交通ルール。
信号があるからこそドライバーと歩行者は道を安心して利用できます。
税金という仕組みがあるからこそ、国は道路や公的サービスを整備できる。
もちろん「税金高すぎる!」「規制が多すぎる!」なんて不満はあるかもしれません。
でも、もし無秩序になったら?誰も道路を整備しないし、誰も治安を守ってくれないし、まさに万人の万人に対する戦いの状態になりかねません。
ルールや仕組みが存在するからこそ、個人の自由を存分に生かせる。
この視点をホッブズから学ぶと、「ああ、社会の秩序ってなんだかんだ大事なんだな」と再認識できるのではないでしょうか。
人生のヒント
法や制度を素直に「ありがたい」と受け止めてみる!
世の中には色々な制度や手続きがあって面倒に思えることも多いですよね。
役所の手続き、めんどくせっ!!!
社会保険料高すぎやろ...
税金8%でも高いと思ってたのに、10%になるの!?
ええ、すべて私が考えていたことでございます。
だってめんどくさいし高いんだもん...
でも、一歩引いてみると、「実は私たちの安全や安心を守るためのもの」という側面がありますよね。
税金を納めるという仕組み、そして税率という傾斜があるからこそ、時代の要請に応じた適切な公共事業が行える。
「なんでこんな制度あるの?」と疑問に思ったら、一度「ホッブズの自然状態はイヤだな...」と想像してみると、意外と納得がいくこともあるかもしれません!
社会契約を意識して、周りと協調する
学校や職場、コミュニティなどで意見の対立が起こりがちなとき。
「でも、ルールとか話し合いで折り合いつけないとバラバラになっちゃうよね?」と、ホッブズの発想で落ち着いて考えてみると、意外と建設的な落とし所が見つかるかも!
ビジネスのヒント
社内ルールやコンプライアンスを整備する意味
会社においても無法地帯だと、クレーム対応が混乱したり、部署間トラブルが絶えなくなったりします。
「みんなが最低限守るべきルール」「仕事を円滑に回すための仕組み」がきちんと存在するからこそ、個々人が力を発揮できるわけですね。
契約文化の重要性
ビジネスはお金や責任問題がシビアです。だからこそ、きちんとした契約書を交わしておくことでトラブルを未然に防ぎ、安心して業務ができるのです。
「契約って大げさだよ~」と思うかもしれませんが、ホッブズ風に言うと「契約がなければ、いつでも争いが起こりうる状態になる」んですね。
自己防衛本能を前提にしたリスクマネジメントの重要性
ホッブズの「自然状態」の考え方は極端ですが、裏を返せば「人間はリスクに対して備えようとする生き物」とも解釈できます。
「油断したらやられるかも...」という恐怖や不安こそが、防衛本能を働かせ、結果としてルールや契約を生み出すわけです。
人生のヒント
保険や貯蓄は万が一のため
現代社会では医療保険や生命保険、年金制度など様々な保障システムがありますよね。
こうした仕組みはある意味「自然状態に戻りたくないから、みんなで備えよう!」という社会契約にも見えます。
いざというときに困らないためのリスクマネジメントとして、最低限の保険・貯蓄は必要、という考え方はホッブズ的といえるでしょう!
自衛のために自己研鑽する
「誰も私を助けてくれないかも...」という危機感から、スキルアップや自己投資を行う人も多いと思います。
もし会社が傾いたら?もし今のキャリアが通用しなくなったら?そうした不安こそが行動を促し、その行動が結果として自分を守る盾になる。
これってまさにホッブズが言う、「怖いからこそ、みんなで仕組みを作る!」の個人版ではないでしょうか。
ビジネスのヒント
リスクアセスメントは超大事!
新規事業を立ち上げるときや、プロジェクトを進行するときには「どんなリスクがあり得るか?」をあらかじめ想定しておくのが鉄則ですよね。
ホッブズが言う自然状態に限らず、人間や組織は「完全に安全」とはなり得ません。攻撃されるリスクもあれば、競合に出し抜かれるリスクもある。
そこで「法的リスクは?」「セキュリティ対策は?」と常に疑問を投げかけ、準備を怠らないことが企業の安定につながります。
共倒れを防ぐための譲歩の大切さ
ビジネス交渉では、相手も自分も「自分の利益を確保したい!」という本能を持っています。
そこでどちらも譲らなければ交渉決裂という“自然状態的バトル”に突入してしまう。
しかし、お互いが少しずつ譲歩して「妥協点」を契約に落とし込むことで、より大きな成果や長期的な信頼関係を築くことができるんですね。
まさにホッブズが説いた「争わないために、絶対的権威を立てる」の現代版といえるでしょう。
協力するって実はみんなで生きるための戦略だよね!
「人間は利己的な生き物」というと、「だったら協力できないじゃん!」と思うかもしれません。
でも実は、ホッブズは「利己的だからこそ、協力した方が得」という形で、みんなを話し合いと契約へ導いているんです。
そもそも自然状態で闘争していれば、ケガをしたり財産を失ったりと損ばかり。平和に暮らすためには協力し合った方が絶対いいよね。
という理屈ですね。
人生のヒント
結局、仲良くした方が得策!
家族や友人、同僚とのトラブルが続くとお互い消耗しますよね。
「絶対に自分の主張を通してやる!」と意地を張るよりも、「少し相手に合わせてみようかな」と考えた方が長期的にはハッピーかもしれません。
「ホッブズ的に考えると、争いより協力だ!」と悟れたら、人間関係がちょっと楽になるかも。
ビジネスのヒント
チームビルディングの重要性
プロジェクトを進める際、メンバー同士がライバル心剥き出しだと衝突が絶えません。
結果、プロジェクト全体が頓挫するという悲劇も起こり得ます。
そこで、チームビルディングやコミュニケーションの仕組みづくりが大事!
「みんなで成功しよう!」という共通のゴールを定め、情報共有をしっかりして、互いをリスペクトし合う風土を作る。
結局、協力した方が結果的に大きな成果を得やすいからです。
取引先や顧客とのWin-Win関係
商売は「自社が儲かればそれでOK」というわけにいかないことがほとんど。
取引先にも利益がないと、長続きしません。
だからこそ、ホッブズのいう「損をしないための協力」という目線を持って、互いに利益を出せるプランを提案することが信頼構築に繋がります。
ホッブズ的には「相手を追い詰めすぎると、いつか自分に返ってくるよ」と考えるのが、争いを避けるコツ!
ホッブズとその後の社会契約論
ホッブズの「強い統治者に従うべし!」という主張に対して、後の思想家たち(ロック、ルソーなど)は「いや、それはやりすぎじゃない?」「もっと個人の自由を大事にすべきだ!」と異論を唱えます。
ロック:自然状態でもそこまで厳しい戦いの世界じゃないでしょ?そして政府には人民の同意が必要だよね?という主張。
ルソー:人間は本来自由で平等なんだから、王様に全部任せちゃダメ!もっと個人の意志を尊重した社会契約を作ろうよ!という主張。
ルソーの主張についてわかりやすく解説した記事はこちら!
ホッブズは「平和のために権力集中!」派、ロックは「ある程度の権力制限!」派、ルソーは「もっと自由を!」派、とイメージするとわかりやすいです。
彼らの議論があったからこそ、近代社会の民主主義という枠組みが徐々に形作られていったんですね。
つまりホッブズの思想は、単に「権力者サンセー!」という時代遅れのものではなく、近代政治哲学のスタートを切った という意味でめちゃくちゃ重要なんです!
さいごに
ここまで「サルでもわかるホッブズ」と題して、ホッブズが生きた時代背景から、その主張や私たち現代人への示唆まで、一気にお話ししてきました。
- 自然状態:人間は自己防衛本能を持つ以上、放っておけば争う!
- リヴァイアサン(絶対的権力)の必要性:争いを防ぐには、強いルールや統治者がいる方がいい!
- 社会契約:お互いに攻撃しあわない約束をして、権力に権限を委ねよう!
このホッブズの大胆な理論をもとに、後の思想家たちが「もっとこうした方がいいんじゃないか?」と進化させていき、近代国家や民主主義が形作られました。
現代を生きる私たちも、「ルールや権力はうっとうしいな」と感じることはあるでしょう。
でもホッブズの理論を踏まえてみると、「みんなの安全を守るための仕組みってやっぱり必要だよね」となるし、逆に「強い力を持つ組織(あるいは上司)が暴走しないようにするにはどうすればいいか?」と考えるきっかけにもなる。
争いをゼロにすることは不可能かもしれませんが、みんなが生きやすいように協力した方がトータルで得。
その発想は、まさにホッブズが唱えた社会契約論の核心ともいえるでしょう。
ぜひこれを機に、ホッブズの『リヴァイアサン』を手に取ってみるのも面白いかもしれません。
最初は難しい部分もありますが、背景をざっくり知った上で読むと意外とスイスイ理解できるはずですよ!
また、ホッブズ以外にもロックやルソー、あるいはマキャベリなどの政治思想家を知ると、現代社会のルールや仕組みがどんな歴史の上に成り立っているのかがわかってきます。
本ブログでは、他の哲学者・政治思想家の解説も続々展開していきますので、どうぞお楽しみに!