【サルでもわかる】学問紹介シリーズ

【サルでもわかる】認知心理学入門!人の心の不思議に迫る魔法の学問とは

2024年12月19日

はじめに

この記事では、認知心理学について初学者の方に向けてわかりやすく解説していきます。

認知心理学は、私たちがどのように情報を取り入れ、理解し、記憶し、行動へとつなげていくのかを探る学問分野です。

たとえば、物事を考えるプロセスや、言葉を使って思考する仕組み、意思決定のメカニズムなど、人間の「心の働き」を科学的に解明しようとするのが認知心理学なんですよ!

心理学の中でも比較的新しく発展してきた領域であり、私たちが普段の生活で当たり前のように行っている「考える」「判断する」「記憶する」といった行動の裏側を紐解く役割を担っています。

この認知心理学を理解することで、私たちの生活はもちろん、仕事や学習など、多様な場面で役立つヒントが見つかるかもしれません。

まずは、認知心理学とはどんな学問なのか、簡単に概要をつかんでいただき、その後に具体的な研究例や応用分野を見ていきましょう!

認知心理学とは?

認知という言葉の意味

「認知」とは、知覚や注意、記憶、思考、言語、問題解決、意思決定など、人間が外界から情報を取り込んで処理し、それに基づいて行動する一連のプロセスを指します。

私たちは普段何気なく「あ、これは○○だ」「今から××をしよう」といった判断や意思決定を行っていますよね。

これらの裏側で起こっている心の働きを体系的に学問として扱うのが認知心理学です。

心理学全体のなかでの位置づけ

心理学にはさまざまな分野があります。

たとえば、動物の行動を研究する行動心理学、子どもの発達過程を研究する発達心理学、心の病気を扱う臨床心理学など。

その中でも認知心理学は、「心の中で起こる情報処理」を中心に捉える学問分野で、脳科学神経科学)や情報工学言語学などとも連携が深い、極めて学際的な分野なんです。

認知心理学が重視するのは、「目に見えない心の過程を科学的にどのように探るか」という点です。

行動から推測したり、実験を通じて仮説を検証したりすることで、人間の思考過程のモデル化を試みます。

たとえば、脳がどのように情報を符号化して記憶に保存するか、注意をどのように制御しているのか、どんなときに判断ミスが起こりやすいのかなどを実験データをもとに調べます。

歴史的背景

行動主義からの転換

心理学の世界には、以前「行動主義」という大きな潮流がありました。

行動主義は「観察可能な行動のみが科学的研究の対象になる」という考え方で、意識や心の中のプロセスといった目に見えない要素は扱わない立場をとっていたのです。

確かに行動を観察することは客観的なデータを得やすいので、一時期は強い影響力を持っていました。

しかし、それでは「どうして人は同じ刺激に対して異なる反応をするのか?」などの、内面の情報処理についての説明が不十分になってしまいます。

そこで1960年代頃から、情報処理モデルに基づいて「人間の心はコンピュータのように情報を処理するシステムである」という視点が台頭してきました。

これが、のちに認知心理学と呼ばれる分野へと発展していきます。

認知革命

この新しい流れは「認知革命」と呼ばれました。

行動ではなく、あえて「心の中の仕組み」を焦点に当て、認知過程を明らかにしようとする動きです。

行動主義が主流だった当時、「心」を直接扱うことは非科学的だという批判もありましたが、情報処理モデルを用いた厳密な実験やデータ分析によって、認知心理学は着実に科学性を高めていきました。

認知革命の影響で、脳の機能と心の働きを結び付けて考える研究が活発化し、さまざまな実験手法や理論モデルが開発されるようになりました。

ここからは、私たちが当たり前に行っている認知プロセスが、どのように説明されているのかを具体的に見ていきましょう!

認知心理学の主要なテーマ

知覚 (Perception)

私たちが目や耳、鼻や皮膚など、さまざまな感覚器官を通して得る刺激情報を脳がどのように処理するかを扱う分野です。

たとえば、視覚情報が脳内でどのように認識されるのか、なぜ錯視が起こるのか、音の高さや大きさをどう判断するのかなど。

日常生活で何気なくやり過ごしている知覚の過程を明らかにすることは、ヒューマンエラーの防止やデザインの最適化にも役立ちます!

注意 (Attention)

人間の認知には限りがあるため、複数の刺激が同時に入ってきたとしても、全てを平等に処理することはできません。

そこで特定の刺激に意識を集中させ、それ以外は無視する(または処理を弱める)機能が注意です。

たとえば「カクテルパーティー効果」と呼ばれるように、多数の人が同時に話していてもうるさい場所でも、自分に関係ある会話だけは自然と耳に入ってくる、なんて経験はありませんか?

これが注意のはたらきです。

記憶 (Memory)

記憶は、認知心理学の中でも非常に研究が盛んな領域です!

短期記憶、長期記憶といった分類から、エピソード記憶・意味記憶などの記憶の種類、またどのように記憶が保持され、どんなときに忘却が起こるのかなどを調べます。

エビングハウスの忘却曲線や、記憶の再生を左右する手がかりなど、学習効率や知識の定着に深い関係がある研究が多いのが特徴です。

そのため、教育心理学とも関連が深いです。

思考・推論・問題解決

人がどのように推論や判断を行うのか、問題解決に際してどんな戦略を用いるのかを調べる領域です。

たとえば、論理パズルや数学の問題を解くときに人間がどのようなステップを踏んでいるのか、直感的な判断と論理的な判断がどのようにせめぎ合っているのかなど。

ヒューリスティックと呼ばれる簡略的な思考法の利点や問題点などを明らかにすることで、ビジネスや教育の場面で活用されることも多いんですよ。

言語

言語心理学と呼ばれることもありますが、どのように私たちが言葉を理解し、産出しているのかを研究する領域です。

文字や音声を入力として、脳内で文法や意味を処理し、そこから文章の内容を理解していく流れを解明しようとしています。

母国語の文法習得や、第二言語学習との違い、失語症など言語障害のメカニズムの解明にも寄与している分野です。

実生活への応用例

認知心理学の理論や研究成果は、私たちの日常生活やビジネス、教育現場など幅広い分野で役立っています!

学習・教育分野

  • 記憶の仕組み
    認知心理学の研究で分かった「短期記憶の容量が限られている」という事実を踏まえて、勉強時には情報をまとめたり整理したりして、脳の負荷を減らすことが効果的だとわかっています。また、分散学習テスト効果など、学習の効率を高める手法も認知心理学の成果です。
  • メタ認知
    自分の思考や学習プロセスを客観的に捉える力をメタ認知と呼びます。「今、自分はどこがわかっていないか」「どうすれば効率よく学べるか」などを自ら考え、調整できる力は学習成功のカギとなります!

ユーザーエクスペリエンス (UX) デザイン

  • ヒューマンエラーの防止
    注意の仕組みや限界を理解することで、ユーザーがミスを起こしづらいデザインやインターフェイス設計を行うことができます。たとえば、スマホアプリのUIをシンプルにし、必要な情報を分かりやすく配置するなど。
  • インフォメーションアーキテクチャ
    サイトやアプリの情報構造を整理する際に、人間の情報処理の特徴やワーキングメモリの容量を考慮すると、使いやすいナビゲーションやメニュー構造を作ることが可能です。

マーケティング・広告

  • 認知バイアス
    人が意思決定を行う際には、無意識のうちに偏った判断をすることがあります。たとえば、アンカリング効果や確証バイアスなど、「バイアス」と呼ばれる特有の思考の癖です。これを踏まえると、商品の価格設定や宣伝文句の作り方で購買行動に影響を与えることが可能となります。
  • 記憶に残りやすいブランド戦略
    認知心理学の知見を活用して、消費者の記憶に残りやすい広告を作ることもできます。たとえば、視覚と聴覚を組み合わせたコマーシャルで印象を強めたり、ブランド名を繰り返し提示して馴染ませる工夫などが典型的な例です。

職場・組織での活用

  • チームコミュニケーション
    認知心理学の研究では、人間同士のコミュニケーションギャップがなぜ起こるのか、どのように誤解や衝突が生じるのかについても説明が可能です。たとえば、認知負荷が高い状態だとミスコミュニケーションが増えるなど、職場環境の改善にも役立つ情報が得られます。
  • リーダーシップと意思決定
    マネージャーが素早く正確な意思決定を行うためには、バイアスにとらわれず多角的な視点を持つ必要があります。認知心理学で解明されてきたヒューリスティックやバイアスの事例を学ぶことで、リーダーシップを発揮しやすくなるでしょう!

認知心理学の研究方法

認知心理学では、実験観察コンピュータシミュレーションなど、多角的な方法が用いられます。

以下では代表的な手法をいくつか紹介します!

実験的研究

心理学の他の分野と同様、被験者を募集し、ある条件下で課題を行ってもらい、その結果を数値データとして収集・分析します。

たとえば、単語のリストを記憶してもらい、後からどれだけ正確に思い出せたかをテストする実験など。

特定の要因(刺激の提示時間、文字のフォント、背景の色など)が記憶や注意にどのような影響を与えるかを調べます。

脳画像研究

近年では、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)やEEG(脳波計測)を用いて、人間がある課題を行っている最中に脳のどの領域が活性化しているかを直接調べることができるようになりました。

これにより、単に行動のデータだけでなく脳内の活動データも分析することで、認知過程における脳の働きをより正確にモデル化できるのです。

観察研究・事例研究

発達心理学の実験と重なる部分もありますが、赤ちゃんや子どもの行動を長期的に観察して、言語や認知機能の成長を追う研究などが典型例です。

症例研究として、ある脳損傷患者がどのような認知機能を失い、どの機能が残っているかを調べることによって、脳内のどの部分がどの認知機能を担っているかを推測する方法もあります。

コンピュータシミュレーション

人間の認知プロセスをコンピュータプログラムで再現し、実行結果を実験データと比較する手法です。

もしコンピュータモデルが人間の行動と同じパターンで成功・失敗を示すのであれば、そのモデルが人間の認知をある程度正確に表現している可能性が高いといえます!

最新の研究動向

認知神経科学との融合

認知心理学は、近年では認知神経科学との結びつきがますます深くなっています。

脳画像研究の技術が向上し、脳内の特定の領域がどのような働きをしているのかが精密にわかるようになったことで、「脳レベルの活動」と「行動レベルの認知過程」を統合的に考えるのが主流の流れです。

ビッグデータと機械学習

現代では大量のデジタルデータを扱うことが容易になり、SNSやウェブ上のユーザー行動データを分析することで、人間の認知や意思決定のパターンを大規模に調査できるようになっています。

機械学習との融合により、これまで発見できなかったような複雑な認知パターンが明らかになる可能性があります!

メンタルヘルス分野への応用

認知心理学の知見は、ストレスや不安、うつなどのメンタルヘルスに関する問題にも役立ちます。

認知行動療法(CBT)など、認知の歪みを修正することで症状の改善を図るアプローチは、認知心理学のエビデンスに基づいています。

今後は、オンラインプラットフォームやアプリを活用したアプローチも増えていくでしょう。

まとめ

認知心理学を学ぶことで、私たちが普段無意識に行っている「認知」という営みを客観的に見つめられるようになります。

そして、自分の認知の仕組みやクセ、バイアスなどを知ることは、日常生活の質を高め、学習や仕事のパフォーマンス向上にもつながるのです。

「入門書を読んでみる」「身近な出来事を認知心理学的視点で捉えてみる」といったちょっとしたアクションからスタートしてみましょう! 

この記事が、認知心理学に対する興味を深め、学びの第一歩となれば幸いです。

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