世界の歴史 思想

保守主義とは?歴史から思想家、現代への影響までわかりやすく解説!

2025年1月18日

はじめに:保守主義のイメージ

「保守主義」と聞くと、何となく「昔ながらのものを大事にする」とか「伝統重視」というイメージを持たれる方が多いかもしれません。

確かに保守主義には現在ある体制や伝統を守るという要素が含まれていますが、実はそれだけではありません!

保守主義は政治思想として長い歴史を持ち、社会の変化や革新に対して慎重な姿勢をとりつつ、現実主義的な視点から「人間や社会はどうあるべきか」を考える重要な思想なのです。

本記事では保守主義の背景や主要な思想家、保守主義を象徴する歴史的イベントを振り返りながら、現代までの変遷や影響をわかりやすく解説していきます!

保守主義 とは何か?

保守主義の基本的な特徴

保守主義とは、既存の社会秩序や伝統的価値観を重んじ、それらを急激に変革することに慎重な姿勢を取る思想を指します。

ここでの「伝統」は、単に昔からの風習や儀式を守ることにとどまらず、長い年月をかけて社会が築き上げてきた法制度や文化的規範、習慣など広範なものを含みます。

保守主義の根底には「人間は不完全であり、社会を完璧にするのは不可能」という思想があります。

そのため、あまりにも急激な改革や社会実験によって、かえって社会を混乱に陥れるリスクを警戒するのです。

ゆえに、漸進的な改良を重視し、「伝統から学ぶことこそが社会の安定と発展につながる」と考えます。

保守主義が重視する価値観

伝統と継続性

長い時間をかけて形成された制度や慣習には、先人の知恵の結晶が凝縮されている、と保守主義の人々は考えます。

革新も必要ですが、成功している仕組みをいきなり壊すのではなく、必要に応じて少しずつ調整していくことを重視します!

秩序と安定

社会が混乱に陥るのを避け、秩序を守りながら安定を図ることは保守主義の大きな目的です。

急進的な変化は、予想外の弊害をもたらす恐れがあるので、慎重に進めようとするのが特徴です。

現実主義

理想や理念にだけ流されるのではなく、あくまで現実を踏まえつつ政治や社会を運営する姿勢が保守主義にはあります。

人間の本性を踏まえ、歴史から教訓を得ることで、実現可能な政策や制度を作ろうとするのです。

保守主義が生まれた歴史的背景

保守主義が広く意識されるようになった大きな契機は、18世紀末から19世紀にかけてヨーロッパを中心に巻き起こった激動の歴史的事件です。

特にフランス革命が象徴的といわれます!

2-1. フランス革命の衝撃

フランス革命(1789年)は、王政や貴族中心の古い体制(アンシャン・レジーム)を打倒し、自由・平等・博愛の精神を掲げて新しい社会を目指した革命でした。

当初、多くの人々は革命を歓迎し、フランス国内だけでなくヨーロッパ各地で「これを機により良い社会が作られるのではないか」という期待が高まったのです。

しかし、革命の中で権力争いが激化し、急進的なリーダー(ロヴィスピエールなど)による恐怖政治が始まり、社会は大混乱に陥りました。

大量の処刑や暴力が横行し、まさに革命の暴走とも言える状況が展開されたのです。

この悲惨な経験を見て、「理想主義が行き過ぎると大きな混乱が起こる」という反省が起こりました。

ここから、「過去の制度や伝統を全否定するのではなく、慎重に変えながら進んでいくべきだ」という保守的な考え方に、一定の説得力が生まれたわけです。

イギリスの政治文化と「漸進的改革」

フランス革命に比べ、同じ時期のイギリスでは大規模な革命が起こったわけではありません。

イギリスでは17世紀に清教徒革命名誉革命を経験し、国王の権限を制限して議会政治が徐々に整備されていった歴史があります。

短期間で根本からひっくり返すのではなく、長い時間をかけて少しずつ制度を変えていく「漸進的改革」の考え方が根付いていたのです。

イギリスの国政は王室の影響も残しつつ、立憲政治(立憲君主制)を取り入れ、伝統と新しさがうまくバランスを保って進化していきました。

こうしたイギリスの歴史的経験は、フランス革命後に広まる保守主義の議論を支える重要な基盤となりました。

保守主義を主張した主要思想家

エドマンド・バーク(Edmund Burke)

保守主義の代表的思想家といえば、まず名前が挙がるのがエドマンド・バーク(1729-1797)です。

バークはイギリスの政治家・思想家で、フランス革命に対して早くから批判的な立場を取りました!

『フランス革命の省察』での批判

1790年に発表した著書『フランス革命の省察』(Reflections on the Revolution in France)において、バークは革命が急進的すぎると懸念を示しました。

彼は、先人たちが培ってきた伝統や慣習を軽視すると、取り返しのつかない混乱を引き起こす恐れがあると主張し、急激な社会変革の危険性を指摘しました。

人間の理性には限界がある

バークは、「人間の理性だけで完璧な社会を作るのは不可能だ」と考えました。

長年にわたって積み上げられてきた慣習には、人間の不完全さを補う貴重なノウハウが詰まっているというわけです。

そのため、急な改革ではなく、過去の知恵を活かしながら徐々に変えていくことが大切だと訴えました。

バークの思想は後の保守主義の原点とされ、フランス革命以降、ヨーロッパ各国で保守的な政治思想を確立する上で大きな影響を与えました。

トクヴィル(Alexis de Tocqueville)

厳密にはリベラルにも近い立場とされますが、フランスの政治思想家であるトクヴィル(1805-1859)も、民主主義が暴走しないよう警鐘を鳴らしました。

主著『アメリカの民主政治』では、民主化社会における個人主義の危うさや専制政治への逆行のリスクに言及しています。

これらの見解は、保守主義の「自由と秩序のバランスを保つ」という考え方とも親和性が高いものといえます。

マイケル・オークショット(Michael Oakeshott)

20世紀のイギリスの哲学者マイケル・オークショット(1901-1990)は、保守主義を「安定を求める性向」として位置付けました。

彼は政府の役割について、社会を計画的に引っ張っていく存在ではなく、むしろ対立を調整し、社会秩序を維持する調停者としての役割を強調したのです。

保守主義の多様性と展開

保守主義は一枚岩ではありません!

国や時代によって、それぞれの「守るべき伝統」や重視するポイントが異なるため、非常に多様な形をとってきました。

イギリス型の「保守党」的伝統

イギリスには保守党(Conservative Party)という政党があり、これが世界的にも有名な「保守政党」です。

イギリスの保守党は王室と国教会、貴族階級を含む伝統的な権威を尊重しながら、時代に合わせて党の路線を修正する柔軟性を持っています。

マーガレット・サッチャー首相(在任1979-1990)以降は、新自由主義的な経済政策を採用するなど、保守主義の中にも革新的な側面が見られるのが興味深いところです。

アメリカの保守主義

アメリカは、そもそもイギリスからの独立革命を経験した国であり、基本的な理念が「自由」や「平等」といったリベラルな価値観に基づいています。

しかし、20世紀以降のアメリカでは、伝統的な道徳観やキリスト教的価値観を守ろうとする「社会的保守主義」と、市場の自由や小さな政府を目指す「経済的保守主義」が結びついて、強力な保守勢力を形成しました。

社会的保守主義:中絶反対や同性婚反対など、キリスト教的な価値観を社会政策の基盤に置く傾向が強い。

経済的保守主義:規制緩和や減税、小さな政府を理想として、国民の自己責任や競争を重視する思想。

こうした保守主義の複合体は、特に共和党を中心に力を持ち、20世紀後半にはレーガン政権(1981-1989)などが代表的です。

レーガンは「政府は問題の解決策ではない。政府こそが問題だ」という有名な言葉で、小さな政府を目指す保守的な政策を推し進めました。

大陸ヨーロッパの保守主義

フランスやドイツ、スペインなど大陸ヨーロッパにも保守主義の政党や思想家がいますが、イギリスやアメリカと比べると、国家の積極的な役割や社会保障をある程度認める伝統があります。

これは君主制やカトリック教会の影響、社会民主主義との混合など、歴史的な背景がそれぞれ異なるためです。

4-4. 日本の保守主義

日本では明治維新以降、西欧型の国民国家を急速に導入しつつも、天皇制や神道などの伝統を重視してきた経緯があります。

第二次世界大戦後、自由民主党を中心に「保守本流」と呼ばれる政治家たちが長期政権を担ってきました。

ここでは家族主義や地方の共同体意識、皇室制度といった要素が保守主義の守るべき伝統の一部と位置づけられています。

また、「経済成長を重視しつつ、国の基盤となる文化や社会秩序を大切にする」というのが、日本の保守主義の大きな特徴とも言えます。

保守主義が後世に与えた影響

絶対王政から立憲政治への移行

ヨーロッパでは、絶対王政に対する抵抗としてリベラルな市民革命が起こりましたが、保守主義はその急進的な動きを抑えつつ、妥協点として立憲政治を確立させる一翼を担ったといえます。

つまり、伝統を完全に否定するのでなく、王政と議会制を折衷させることで政治の安定を図り、「漸進的改革」の道を残したのです。

自由主義との相互作用

近代以降、自由主義社会主義など、さまざまな政治思想が台頭しました。

その中で保守主義は「急激な変化」に対するブレーキ役を果たす一方で、社会の変化にあまりに背を向けすぎると、今度は自らが時代遅れになる危険もあります。

そのため、自由主義との相互作用で、議会制民主主義や社会保障制度といった新たな要素も取り入れ、各国で独自の保守主義に発展していきました。

現代政治への影響

現代の主要国には必ずといっていいほど「保守政党」が存在します。

選挙を通じて政権を握ったり野党になったりと、その勢力図は変わりますが、依然として国の大きな柱の一つであることは間違いありません。

特にアメリカでは共和党イギリスでは保守党日本では自民党といったように、保守勢力が政策決定に大きく関与しています。

保守主義の影響力は政治だけにとどまらず、社会の文化的価値観やモラル、家族観、教育方針などにも及んでいます。

最近ではグローバリズムに対する懐疑や、移民・多文化主義への反発といった形で表面化することもあります。

保守主義者の中には、現代の過度なグローバル化や技術の急速な進歩に警鐘を鳴らし、「地域コミュニティの再建」や「伝統的な家族の尊重」といったテーマを掲げる動きも見られます!

保守主義を理解する上でのポイント

「守るもの」は時代と地域で異なる

保守主義は「伝統を守る」ことが基本ですが、「どの伝統を守るか」は時代や場所によって全く違います。

例えば、アメリカの保守主義は「建国の理念(自由・民主主義)やキリスト教的価値観」を重視しますが、日本の保守主義は「天皇制や家族主義」といった要素がより強調される傾向があります。

変化を全否定するわけではない

保守主義は時として「変化を嫌う」と誤解されがちですが、実は全く変えないわけではありません

漸進的な改良や必要性が明らかな変化は受け入れます。

ただし、それが社会全体にどんな影響を与えるかをよく考え、慎重に進めるべきだというのが保守主義的な姿勢なのです。

極端な保守主義と穏健な保守主義

どの思想にも過激派と穏健派がいるように、保守主義の中にもいろいろな傾向があります。

過激な保守主義(反動主義とも呼ばれることがあります)は、あらゆる変化を拒絶するだけでなく、むしろ過去への復古を主張する場合もあります。

一方、穏健な保守主義は、伝統を尊重しながらも現代社会の要請に応える柔軟性を備えていることが多いです。

まとめ

いかがでしたか?

保守主義 とは、一言でいえば「社会の秩序や伝統を守りながら、緩やかな変化を認めていく思想」です。

フランス革命の混乱をきっかけに、エドマンド・バークをはじめとする思想家たちが「革命の危うさ」を指摘し、そこから「伝統と過去の知恵を活かす」ことの大切さが大きな注目を集めました。

その後、世界各国で保守政党や保守的な運動が形成され、それぞれの文化や歴史に合わせて多様化していきました。

保守主義が後世に与えた影響は、立憲政治や民主主義の確立、社会政策、経済運営など多岐にわたります。

現代においても、保守主義は政治や社会を考えるうえで欠かせない視点です。

「どの伝統を守るか」「どのくらいの変化なら許容するか」については国や時代によって違いがありますから、保守主義を学ぶ際にはその国や社会の文脈を理解することが大切なのです!

-世界の歴史, 思想